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はじめに

 我々は、最先端の研究に参加しません。最先端の研究を創ります。自分達の後ろに出来た歴史を見るのは気持ち良いものです。
 具体的には、半導体レーザの第3世代化に研究室を挙げて取り組んでいます。半導体レーザは、IT社会を実現するキー・デバイスです。現在市販されている半導体レーザには、2つ基本構造があります。一つは、黎明期からの端面発光型で、レーザ光は光強度の増幅が生じる活性層を往復運動します。2000年には、クレーマー博士とアルフェロフ博士がノーベル物理学賞を受賞しました。 もう一つは、東京工業大学学長の伊賀博士が発明した面発光レーザあるいはVCSELです。レーザ光は活性層と垂直に往復運動します。非常に効率が良く他の性能にも優れるのでギガビットイーサネット等で広く用いられています。2つの基本構造の数量的シュアは、現在ほぼ互角です。そのため、伊賀先生も次期ノーベル賞候補の一人と考えられています。しかし、これら二つの基本構造にも弱点があり、今後のIT社会を担うには力不足です。我々は、この問題をブレークスルーするために、第3世代の半導体レーザを提案・開発しています。
 第1世代の端面発光型レーザでは、共振器のミラーに、結晶の劈開面を使用します。原子レベルで平坦なミラーを簡単に作れますが、高い反射率を実現できません。そのため、共振器の長さがレーザ光の波長の約1000倍も必要になります。第2世代の面発光型レーザでは、共振器のミラーに、屈折率が異なる材料を交互に積層した多層膜を使用します。99%以上の超高反射率を実現することができます。共振器の長さは1波長で大丈夫です。しかし、共振器内を往復する光が増幅されるのは、僅かに量子井戸活性層の厚みのみです。
 我々が提案している第3世代レーザでは、共振器内を往復する光が十分に増幅されるように、光を活性層で往復運動させます。共振器のミラーには99%以上の反射率を実現することができるフォトニック結晶を用います。共振器長が数ミクロンの理想的な半導体レーザになります。
 フォトニック結晶は、研究成果がNatureやScience等の著名学術誌にも度々取り上げられる大変ホットな研究分野です。しかし、学術的評価とは裏腹に、産業への貢献が小さいのも事実です。
 我々の研究により、足踏み状態にある半導体レーザ研究開発のボトルネックの打開、および、フォトニック結晶の実用化が、促進されることを研究室の目標としています。

図1 第1世代、第2世代、および第3世代半導体レーザの基本構成図

 

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