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デバイスグループ

 ナノテク技術を駆使してフォトニック結晶を作製します。空気孔の周期は、半導体中でのレーザ光の波長とほぼ同じ300ナノメートル程度です。直径は、200ナノメートル前後です。このサイズは、ナノと言うにはやや大きく、正確にはサブ・ミクロンと言うべきです。しかし、空気孔の位置やサイズは、数ナノメートルの精度でコントロールしなければならないので、正にナノテク技術です。
 使用する装置は、高価なハイテク・マシン群です。お金を掛けるほど、高精度な加工が可能になります。しかし、お金で全てが解決できるかと言えば、決してそんなことはありません。要求仕様の精度で加工し、なおかつ、再現性を出すためには、様々なことに気を配らなければなりません。また、研究室の装置では特性が不十分な場合もあるので、同一専攻内の斗内研究室や大阪大学超高圧電子顕微鏡センターの装置をお借りすることもあります。これも、気を使います。(斗内先生、西先生、いつも感謝しています。)
 デバイスであるレーザを作製するには、フォトニック結晶形成以外のプロセスも大事です。我々は、AlAsの選択酸化技術や電極形成技術なども開発しています。
 先の“第3世代半導体レーザ”のページで説明したように、開発するレーザで鍵となる技術がAlAsの選択酸化です。AlAsの選択酸化技術は、第2世代の面発光レーザの作製技術として、既に実用化されています。しかし、我々のレーザでは、要求精度が約10倍厳しいです。100±10ナノメートルで酸化幅を再現性良く制御することが求められます。(図7の結果を見て下さい。キチンと、できているでしょう!)
 また、電極形成技術も非常に重要です。電流注入(電気的動作)に必須です。電極形成により、フォトニック結晶の空気孔が埋まってしまっては元も子もありません。従来の半導体レーザとは、異なる技術を開発しなければなりません。
 我々のグループでは、作製したレーザの素子特性の評価も行っています。全員で行った研究開発の最終成果を独り占めできるので、美味しい役と言えます。でも、なかなか、美味しい成果は出ません。より良い成果が出るように、他のメンバーに解析結果を知らせて、いろいろと改善して貰わなければなりません。研究室全体にフィードバックを掛ける重要な役目です。

 

図17 電子線リソグラフィー装置: 加工サイズが光の波長よりも小さいので、光学リソグラフィーでは対応できません。電子線を用いてナノ加工を行います。また、試料の出来栄えを評価するにも、光学顕微鏡では全く見えません。本装置は、電子顕微鏡としても使用できます。働き者ですが少し古い装置です。

 

図18 ICPドライエッチング装置: 実際に空気孔を形成する装置です。直径200ナノメートルの孔を真っ直ぐに掘らないとならないので、非常に難しい技術です。その為に、ICPと呼ばれるプラズマを使用する最新鋭の装置です。

 

図19 空気孔の上面写真: 周期300ナノメートル、直径200ナノメートルの空気孔です。中央の空気孔が無い部分に光が閉じ込められて、レーザの光共振器となります。共振器の両脇の空気孔は、Q値を高めるために、意図的に外側にシフトしています。隣の空気孔との間隔に注目ください。空気孔のサイズや形状が微妙に異なるので更なる改良が必要です。

 

図20 空気孔の断面写真: 深さ約1μmの空気孔を掘った試料の電子顕微鏡写真です。目標の深さは2〜3μmです。なお、本試料では、表面にSiO2のエッチングマスクが残っています。

 

図21 電子線蒸着装置: 電極の原料である金や白金に電子線を当てて溶かします。そこから出てくる金属蒸気を試料表面に蒸着させて電極を形成します。装置の写真で幾つかのものは、黄色味を帯びています。これは、その装置がある部屋の照明が黄色だからです。電子線リソグラフィーで使用する感光剤(レジスト)は、普通の照明だと感光してしまいます。電子線リソグラフィー装置がある部屋が、クリーンルームで、全ての照明が黄色のイエロールームでもあります。この部屋の中では、全ての物が黄色に見えます。最初は、戸惑いますが直ぐに慣れます。

 

図22 作製した電極を評価している様子: 電極(パッド)は、何とか光学顕微鏡で見ることができる大きさです。でも、電気測定のために探針(プローブ)を当てるのは至難の業です。

 

図23 作製したレーザの光学評価の様子: 共振器のサイズが数マイクロメートルなので、顕微鏡を用いて評価します。顕微ラマン測定装置を転用しています。青と緑の光は、光励起用のArイオンレーザの発光です。

 

(旧メンバー: 山本浩貴君、木下晴雅君、河野孝透君、百瀬英毅助教、植田慎治君、宮地哲平君)

 

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